2009年07月17日
アスタリスクに代表されるIP PBXが実用範囲に入ってきました。オーストラリアのオープン IP PBX プロジェクトなどにより、アプライアンスレベルの、つまり、一般PC を使わない専用機が市場に投入されて、価格がかなりこなれてきました。
SZ Express の運用母体のAkkord International 社でも長期間の試験期間を経て、社内でのアスタリスク運用に踏み切りました。
その結果、こんな事が可能になりました。
1. 内線の一元化が可能になります。この意味は分かりにくいかも知れませんが、本社、海外支社、また、バーチャル支店(無人だが、電話番号だけ設置してある)との間を同一システムで連結でき、内線はどの国からでも相互に利用できることになります。
弊社の場合、東京、中国シンセン、台湾台北、米国ワシントン州にローカルの固定電話番号を用意し、それらが同じ1台のMINI-100 IP PBX へ接続されています。内線番号は中国と台北のスタッフのIP電話機やソフトフォーン、そして、携帯転送用へと割り振られています。
2. IP電話を持っていれば、地球上どこへでも(インターネットがある限り)内線がつながりますので、自宅や出張先のホテルへ内線通話ができます。IP電話機はハードのみならず、ノートパソコンや携帯(スマートフォン)にインストールできるソフトフォーン(X-LiteやZoiper)も同じ役割を果たします。
お客様へはいちいち出張先の連絡先などを通知する必要がなくなるので、ビジネスチャンスを逃がしません。
内線電話から外部につまり、IP-PBXの外線に掛けた電話 (外線発信) には、通常と同じCaller ID (発信者番号)が表示できます。つまり休暇先のバリ島のホテルから、千代田区のお客様に電話しても、受信者であるお客様の電話機または携帯には、弊社の東京の発信者番号が表示されます。(*1)
3. 弊社の社員が社外にいるときには、外線から受けた通話を、任意の携帯に転送するのが簡単になりました。その転送費用もITSP (*2) を利用できるので、一般の地域電話会社のものよりも格安。携帯で受け取った通話を他の社員へ、さらに転送するのも可能です。例えば#を押して、転送モードにし、転送先の内線をダイヤルします。
4. 弊社のお客様など掛ける側にとっても、国内電話料金で、結果的に海外にいる弊社の担当者へ電話が通じることになり、とても経済的になります。お客様は国際電話の利用が不要になります。
5. IVR(*3)とボイスメールが利用できます。日本では航空会社の予約システムや外資系の会社以外ではあまりなじみがありませんが、海外ではIVRによる自動応答の会社は増えています。IVRは24時間365日働いてくれますので、サービス産業の場合などには、効果が期待できます。ボイスメールは、IP電話機自体で聞く事もできますが、指定のメールアドレスへ音声ファイルで配信されますので、社外にいる時でもPCや携帯のメールで内容を聞くことができます。その場合、Quick Timeなどのプレイヤーソフトが必要です。
6. 最近は電話の内線の配線よりもLANの配線のほうが普及しているオフィスも少なくないと思います。
IP電話システムによる内線用の電話機の増設は、LAN の配線があれば自分たちで簡単にできます。従来のPBX+内線の配線は専用の工事会社へ依頼せざるを得ず、バカ高い工賃を取られたものですが、それらがLANの工事費だけですみます。
PBXの内部設定も従来は電話工事会社の稼ぎ頭だったのですが、IP PBX にすると、管理者がパソコンのブラウザーで、分かりやすいGUIの上で内線の増設、リンググループの設定、オペレータの設定、IVR の内容変更などを即座にすることができます。
7. とにかく、社内全体の通話費用が削減できます。理由は、海外支店間の通話が無料になること、各国の取引先や仕入れ先に対して、一番安い回線か、現地の地域固定回線で、かけることができる、などによります。
以上のようなことが、3万円程度の投資(IPPBXとゲートウエー)で可能になってしまうのです。
(*1) Caller ID (発信者通知) は、ITSPにより通知できる場合とできない場合があります。日本のアジルフォンの場合は、03か06の番号を取得でき、その番号が発信者通知として相手に表示できるようにすることもできます。
(*2) ITSP
Internet Telephony Service Provider. インターネット上で利用できる電話通話サービスを提供する会社。一般的に従来の電話会社、例えばKDDIなどより、格段に安い料金でサービスを提供する。
(*3) IVR
Interactive Voice Response。音声自動応答装置。Asterisk の場合はデジタルの音声ファイル(GSMフォーマットなど)を利用して、受付の応答、ボイスメールのプロンプト(ガイド)などに利用している。